庭のシュンラン
団地の庭のシュンランが今年も花をつけた。
このシュンラン、じつは私が10年前に「盗掘」してきたもの。
10年前、高槻の萩谷公園予定地。大木から低木まですべての木は切り倒され丸裸になった山に、わずかに残った可憐な花を見つけた。このまま見捨てれば必ずや造成土に埋もれるであろうこの花を私は持ち帰って来て団地の庭に移し植えてしまった。これが「盗掘」の実態だ。
あれから10年、毎年可憐な花を咲かせている。そして毎年、私はあの日の光景を思い出す。
公園ができて8年、シュンランが咲いていた尾根は今は立派なサッカー場に変わった。オオヒキヨモギ絶滅。シダの移植は失敗。オオハナワラビ、オオムラサキ、ゴマダラチョウ激減。当時保全対象種だった生き物たちは殆ど回復していない。多くの生き物たちの命の絆を断ち切って、今の公園がある。
シュンランは何を思っているだろう。もといた場所に帰りたいだろうか。けれどそこに仲間の姿はもうない。変わり果てた風景を見た時、何を思うだろう。
すまないが、この場所でずっと私たちの気持ちを和ませていてくれないか。