かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

世界報道写真展を見て

きのう、「世界報道写真展」を見てきました。

私が街へ出るのは何年ぶりのことでしょう。

街は嫌いですが、これだけは見ておきたかったのです。f:id:kakeyan60am:20190812124504j:plain

世界報道写真展とは1955年にアムステルダム世界報道写真財団が発足。翌年から始まったドキュメンタリー、報道写真の展覧会。

世界中の約100会場で展示され、約400万人が会場に足を運ぶ世界最大の写真展。f:id:kakeyan60am:20190812124607j:plain

世界中で起きている内戦、テロ、災害、移民問題、環境問題、飢餓…。

その現実をプロのカメラマンたちが圧倒的な力量で緊張感を伝える。

見る者の心に迫ってくる。

 

撮影OKということで、気になった写真を撮ってきた。

組写真1位 世界報道写真ストーリー大賞 ピーター・テン・ホーペン

2018年10月から11月にかけて、数千という中米の難民がアメリカ国境を目指すキャラバンに加わった。キャラバンは、2018年10月12日にホンジュラスのサン・ペドロ・スーラを出発、話が広まるにつれ、ニカラグア、エルサルバトル、グアテマラからも人が集まりだした。移民キャラバンは毎年異なる時期にアメリカ国境を目指して移動するが、今回のキャラバンは、少なくとも2,300人の子どもを含む7,000人と、最近の記憶では最大の人数となった。道中は、気温が30度を上回ることも多い中、1日およそ30キロを歩くという過酷なものであった。

左:2018年10月30日、メキシコ南部のタパナペテク郊外で、移民を乗せるために停車したトラックに駆け寄る人々。

右上:2018年10月29日、タパナテペク郊外で乗車させてくれたトラックに乗る移民。

右下:2018年10月30日、メキシコ・フチタンで1日中歩き続けたのち眠り込む父親と息子。f:id:kakeyan60am:20190812124729j:plain

 

「1枚の写真」が持つ力。世の中の情勢を一変させるほどの力を持つ。凄い、と思う。その最前線に立つカメラマンに敬意を抱く。

 

どうしても「生き物」に足が止まる。

自然の部 単写真1位 ベンセ・マテ

水中に投げ戻された後、カエルの卵に取り囲まれながら水面に上がろうともがく、脚を切断されたカエルたち。2018年4月、ルーマニアの東カルパティア山脈コヴァスナ県にて。

カエルの脚を食用に捕獲するのは、雄と雌が交尾し卵を産む春が多い。時に生きたままで脚を切断することもある。その年間販売高は毎年およそ4,000万米ドルにのぼり、取引には世界中の国々が参加する。f:id:kakeyan60am:20190812124854j:plain

 

自然の部 組み写真1位 ブレント・スタートン

数千年の歴史を持つ鷹狩りの風習が、とりわけアラブ世界の奮闘により国際的に復活しつつある。人に飼育されているハヤブサは、絶滅危惧種に含まれている鳥類を含め、捕獲された野鳥の取引削減に貢献している。

セーカーハヤブサは、生息地の消失と違法な野生生物取引で絶滅の危機にさらされている。

上列左:モンゴルのウランバートルで、設計が不適切な電線に触れて死んだセーカーハヤブサ中央アジアでは年間4,000羽のセーカーハヤブサが感電死している。f:id:kakeyan60am:20190812124957j:plain

 

環境の部 単写真3位 マリオ・クルス

フィリピンの首都マニラに流れるパッシグ川に浮かぶゴミに囲まれたマットレスに横たわる子ども。彼はリサイクル可能なゴミを拾い集めている。f:id:kakeyan60am:20190812125046j:plain

 

ポーレートの部 単写真3位 アロンヤ・コチェトコワ

がんを治療中のアロンヤ・コチェトコワ。自宅でテーブルにつくものの、好物のボルシチに目を向けることすらできない。

アロンヤが手術、化学療法後に撮影したセルフポートレイト。食べることの重要性を理解しながらも、なかなか口に運べない。写真を撮ることは他のがん患者のサポートになればと願い自らのつらい体験を共有するための手段であったとともに、自分が好きだったことを行うことによって、自らの試練を受け入れる手立てにもなった。f:id:kakeyan60am:20190812125152j:plain

 

見てゆくうちに心が沈んでゆく。

この気持ちは何なのか?

世界の現実を晒されて、余りに隔差のある私生活からくるのか?それとも「死」が直面している恐怖心からなのか?いやそうじゃない。これはきっと応援歌のはずだ。

この1枚を見ることと見ないことでは、世界が余りにに違ってくると思う。

私はきょうも、今も生きている。幸せなことに。

 

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