かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

二つのケーキ

今年の夏、私は60歳を迎えた。
そして二つのケーキと三度の会席でみんなから祝ってもらった。



ひとつは家族で。もうひとつは友人たちで。そしてサプライズは宿先での仕事仲間から祝福を受けた。
そして今、私の目の前にたくさんの戴き物がある。




有難いことだ。私は「幸せ者」だ。

若い頃、還暦を迎える私の姿など想像もしなかった。
私が60で、親父が96、息子は37になった。

人生には挫折や飛躍や挑戦や転機があり、
その中で喜び、悲しみ、苦しみ、怒りながら暮らしている。
60になってもそのことに変わりはない。

歳をとることは老いることかもしれない。
たしかに登りの現場は辛くなった。いままでは一気に登りつめられた斜面でも今は一服してしまう。歳には勝てないのかもしれない。

しかし歳をとることは「味を出す」ことかもしれない。

昨日、「太郎」へ行った。
私は「釜玉」、かみさんは「きつね」
昼前とあって、大将や店員のおばさんは臨戦態勢。いつもより手際良い。
出てきた釜玉をずるずると吸い込む。となりのかみさんもピッチが早い。私が食べ終わるのと殆ど同時だった。
いつものようにかみさんのきつねの残った出汁をいただく。
「旨い!」やっぱりこれだ、この味。
でしゃばらず、尖らず、しかし深く、丸く。うどんに馴染んで…。
この味を出すために大将はどれくらい苦心したのだろう?

私も太郎のうどんのような「いい味」が出せたらな、と思う。
とうてい無理かもしれないが。

元気で無事にこの夏を越せたことに感謝したい。
(記念に60の私の手を撮っておく)



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