かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

繁殖の季節に(前編)かけす通信vol.183



 生き物たちの繁殖シーズンを迎えた。
この季節になると思い出す恥ずかしい体験がある。私はある探鳥会でキツツキの巣穴の前で繁殖行動を見ていた。親が餌をくわえて何度も巣穴に出入りし、ヒナが穴から顔を覗かせるのを長々と見続けた。何のためらいもなく、いや少しはあったが、「見たい!」が優先していた。その後、ある大先輩が野鳥の掲載写真に抗議された事を知った。内容は「繁殖活動にストレスを与えるような写真は控えて欲しい」というようなものだった。すなわち巣やヒナの写真は公にはしないでほしい、ということ。その通りだと思った。ガーンと頭を砕かれた気分だった。私の行為はキツツキにストレスを与える行為だった。
 ほんとに鳥にはストレスなのか?鳥に聞いてみないと分からないが、ほんとに鳥が好きなら、鳥が見せる「仕草」で分かるはずだ。それも分からないのなら鳥を見ないほうがいい。
 ある現場でナナホシテントウの羽化シーンを見た。暇だったので、ついつい見入ってしまった。黒い七つの班が出るまで2時間くらい、2時間後、やっと歩き出した。目の前に指を近づけるとするすると登り始めたが、飛びはしなかった。また葉の上に戻してやったが、じっとしていた。彼にもストレスを与えてしまったのだろうか。
 生き物との付き合い方でその人の生き方が見えてくる。
それから私は6年飼い続けた我家の水槽の生き物たちを逃がしてやった。
後編へつづく

スターマーク