かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

いけばな新進作家展2017

先日、家のチャイムが鳴った。
出てみるとお隣の峠先生。
先生は華道池坊の偉いお方。

「電動ドライバのビットを忘れてきてしまって…。お持ちなら貸してもらえませんか?」
どうやらお隣で作業されるようだ。
若い女性の生徒?さんも一緒だ。
「きょうはここで練習します。」
部屋に上り込んで白樺の枝をコンパネに仮止めする作業を手伝っ
た。
「ふーん、こんなやり方するんですね。これは立花ですか?」
「いえ、自由花です。9月に展示会があるんです」
「そうなんですか。仕上がりはどんなふうになるのかなぁ?」
「後日、招待券持ってきます」

私はいけばなはしていない。
いけばなの基本も何も知らない。
ただ、いまものすごく興味がある。
それは。たぶん。
峠先生との出会いからだと思う。
昨年の「花の力」展を見た時、衝撃的な感動を覚えた。

『虫食い葉・先枯れの葉・枯枝までも、みずみずしい若葉や色鮮やかな花と同じ草木の命の姿ととらえ、美を見出すことが池坊の花をいける心であり、理念です。』

池坊の理念はまさに芸術そのものだ。

昨日の日曜日、観に行ってきた。テーマは「水」。


たくさん並ぶ作品の中、私が気に入った作品を紹介します。


未生流(総家)月城 禎甫 作。ブドウ。



華道高野山 土井 眞由美 作。アセビシオン、リンドウ、ピンポンギク、ケイトウホトトギス



池坊 日種 直美 作。なずな、リンドウ、クルクマ、ミスカンサス、エノコログサ、キバナコスモス、ルリタマアザミ


で、これがあの時の完成品。
池坊 岡田 遼子 作。トルコキキョウ、ライムポトス、白樺、煙草。


作者と再会。
「こんにちは。こうなったんですか!」
「はい、あの時はありがとうございました」
「いいえ、おもしろいですね。敢えて題を付けるなら?」
「…んーと、白樺の朝」
「なるほど」

次は、
池坊 村川 明子 作。ヤナギ、野イバラ、ヒマワリ、ケイトウ、フジバカマ、ドラセナ、ジャカランタ。



MOA山月光輪花 藤田 美惠子 作。もみじ、すすき、てっぽうゆり。



嵯峨御流 松本 恵理甫 作。「生」芯、ステファニア。


この作品も作者がおられてお話を伺いました。
「この枯れ木はマツ、マツは枯れれば白くなるんです」
「へー、よく見つけられましたね」
「この枯れ木、何に見えます?」
「んーと、龍?」
「そうです、さすがですね!丸い壺は玉のつもりなんです」
「なるほど」
作者の思い入れがよく分かる。


最後の作品。
小原流 大東 香保吏 作。


「!何これ?あっ、クヌギのどんぐりの殻斗や!」
これもいけばなか!花がないけど。

作者がおられた。いっぱい聞きたいことがあった。
「これって、殻斗ですよね。軸は何なんですか?」
「丸い発泡スチロールのうえに二重にならべてくっつけてあるんです」
「へぇー、すごい!」
「苦労しましたよ。きれいに並べるのが」
「花を使っておられないですが…」
「これも植物のひとつですから」
「なるほど。これ、いいですね」
「ありがとうございます」

てなわけで、興奮冷めやらぬうちに会場を後にした。
いけばな、おもしろい。
で、私がいちばん気に入ったのは…。
最後の殻斗の丸い玉。
我が家の床の間に置きたいな。



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