引越し 後編
季節は移ろい、1年があっという間に過ぎる。
「時間よ止まれ!」と呪文をしても時は止まったりしない。
空になった席にいつかまた誰かが座る。
「時間よ止まれ!」と呪文をしても時は止まったりしない。
空になった席にいつかまた誰かが座る。
5年生になった春。三郎の家の軒下にもツバメがやって来た。親ツバメはせっせと泥を運んできて巣を作り、産卵し、抱卵し、ヒナが6つ生まれた。
今年は三郎の家の窓から二人で顔を出して観察した。
ヒナはすくすく育っていく─。
今年は三郎の家の窓から二人で顔を出して観察した。
ヒナはすくすく育っていく─。
5月のなま暖かい夜だった。竹夫の家の玄関に3人の姿があった。三郎とお母さんと見知らぬ男性と。
その男性が口を切る。「今までお世話になりました…」
それは別れの挨拶だと竹夫にもすぐにわかった。三郎は今にも泣き出しそうな顔で立っていた。 1年前と違って─。
「さぶちゃん!引っ越すの?」
「うん竹ちゃん、ありがとう。またはがき出すよ」三郎はぺこりと頭を下げた。
その男性が口を切る。「今までお世話になりました…」
それは別れの挨拶だと竹夫にもすぐにわかった。三郎は今にも泣き出しそうな顔で立っていた。 1年前と違って─。
「さぶちゃん!引っ越すの?」
「うん竹ちゃん、ありがとう。またはがき出すよ」三郎はぺこりと頭を下げた。
翌朝、三郎の姿はもう無かった。家の中は片付けられて空っぽ。
軒下のツバメがぽつんととり残されたようで寂しそうだった。
軒下のツバメがぽつんととり残されたようで寂しそうだった。
竹夫は夢を見ているのかと思った。昨日までの三郎との日々はいったい何だったんだろう。夢の中の出来事だったのだろうか?
小さな子供のちからではどうすることもできない大きなちからで、世の中が回っているような気がしていた。
小さな子供のちからではどうすることもできない大きなちからで、世の中が回っているような気がしていた。
三郎が引っ越していって1ヶ月くらいが過ぎた日、三郎からはがきが届いた。
名古屋の住所と「こんどはお父さんと暮らせるようになった」と書かれていた。
裏にはツバメの絵が書いてあった。三郎の家の軒下に巣を作ったツバメの絵。
その絵を見たとき、初めて竹夫は泣いた。
名古屋の住所と「こんどはお父さんと暮らせるようになった」と書かれていた。
裏にはツバメの絵が書いてあった。三郎の家の軒下に巣を作ったツバメの絵。
その絵を見たとき、初めて竹夫は泣いた。
おわり