アゲハの物語。
私はナチュラリストでもなければ昆虫学者でもない。たんなる生き物好きなお爺さん。
だから生き物の事象を理論だって解説したり、思慮深く考察したりできない。
蚊に刺されれば殺すし、毛虫を見つければ退治する。
そして私は時々「鬼」になる。
我が家に3本の柚子の木がある。それは柚子の実を成らせる木でなく、チョウを育てる木。アゲハチョウの食樹として植えている。そこへハチたちが狩りにやってくる。アシナガバチ、スズメバチなどが育ち盛りのアゲハの幼虫を狩り、肉団子にして巣へ運ぶのだ。肉団子はハチの幼虫の餌になる。それが自然の摂理。
けれど、私は鬼になる。柚子の木で待ち構えていて、ハチを見つけるや否や、殺虫スプレーを吹き付ける。まるでハチが敵のように。「せっかく育った幼虫を死なせてなるものか!」
私はナチュラリストでも昆虫学者でもない。でも、アゲハを「飼育」するのは止めた。
以前は「羽化」の瞬間を見たかったから、蛹を保護して寝床の横に置いていた。
でも止めた。鬼と矛盾するかもしれないけれど、止めた。理由はよくわからない。
アゲハチョウが卵から成虫になるまでは約2か月かかるらしい。
4月のある日。卵を発見した。何個かある。
ふ化直後の幼虫。
少し大きくなってきた。まるで鳥の糞。
アシナガバチ?に襲われた残骸。
終齢幼虫かな?
5/26、ユズの花が咲きました。
かわいい。この精緻で不思議な模様はどのようにして作り出されるのか?
5/29、木から離れました。どこへいくのか?蛹化する場所を探しに木から離れると言われています。
塀の裏にたどり着き、動きが止まりました。
5/30、前蛹になりました。
5/31、蛹になりました。まだ心配です。寄生バチが産卵するかもしれません。
そして、12日後の6/12、昼過ぎ気づくともぬけの殻。無事羽化したようです。羽化シーンは見られなかったけれど、良かった良かった!
結局、同期の4頭の終齢幼虫は1頭だけ羽化を確認。残りの2頭は肉団子、残り1頭は行方不明。
その日の夕方、雨が止んだ時、一頭のアゲハチョウが庭にやってきました。せわしなく花に止まりながらひらひらと飛んでゆきました。まさか、当人?じゃない、当チョウだったのでしょうか?そう思いたいところですが。
あーあ、でも良かった。
殺風景な我が庭に紫陽花が咲き出しました。