かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

「裏打ち」に挑戦

ひょんなことから話が弾み、私の写真の師匠を介して、書をいただいた。
作者は和歌山で書道教室を開いておられる書道家のS先生。
書いてもらったのは、私の要望に応えて山上憶良の歌。

世間(よのなか)を 憂しと恥(やさ)しと思へども
飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば


世の中を辛いとか生きているのも恥ずかしいとか思うけれど、ここから飛び出すことはできないよ、鳥じゃあるまいし。

この歌は「貧窮問答歌(ひんきゅうもんどうか)」の長歌二編に続く二首の反歌のうちのひとつ。

1300年前の奈良時代。下級の貴族だった憶良は、ほかの誰にも見られない歌を歌った。それは貧しい人たちのため息や、子を思う気持ち、老残の身の苦しさ。農民たちの生活の貧しさに心を砕いた。万葉の世界で、さぞ風当たりも強かったであろう。
そして、1300年経た現在でも心に響くことが、ある意味悲しい。

鳥になって飛んでいきたいくらいに貧しかった人たち。でもここで生きていくしかない。私には応援歌のように伝わってくる。

この歌を床の間に飾りたい。

早速、「裏打ち」に挑戦してみた。
「裏打ち」とは紙・布・革などの裏に和紙や布などを貼って補強すること。
初めての体験。まずは自分の書で練習し、本番にとりかかった。
①用意したもの。障子のり、障子紙無地2枚、はけ2本、パット、水、霧吹き、ベニヤ板。


②平らなテーブルの上に障子紙1枚の表側を上にして置き、霧吹きで水をたっぷりとかけ、はけでしわを伸ばす。


③④その上に本書を裏向きにして置き、霧吹きでスプレーして、はけでしわを伸ばす。




⑤もう1枚の障子紙の表側に水で薄めた障子のりをはけでまんべんなく塗る。


⑥⑤を裏返し、本書のうらの上に乗せ、はけで空気としわを取り除く。


⑦⑥の障子紙の周りに障子のり原液を塗る。
障子紙+本書+障子紙の3枚セットをテーブルからはがし、ベニヤ板に表向きで貼り、一番上の障子紙をゆっくり取り除く。


⑧この状態で約半日乾燥させる。


⑨乾ききったら余分な障子紙を切り落とし、裏打ち完了。きれいにできました。


⑩あとはお好みの額に入れて出来上がり。


⑪殺風景だった床の間がいい雰囲気になりました。
Y師匠、S先生、ありがとうございました。

 

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