ねむの花
今朝は細い雨が降っている。
ねむの花が咲いている。
ねむ。
この花には思い出がある。
9年前、崖を滑り、川を渡って辿り着いた場所で、
白い綿毛の小さな君をやっと見つけた。
「おったぁー!」
谷じゅうに響く渡る声で叫んでいた。
最初に見つけた者に命名権があるというまやかしのルールに則って
私は君に「ねむ」と名づけた。
それは傍にねむの花が満開だったから。
急な登りで辿り着いた木の間越しの斜面からねむを見た。
そこは日陰で、汗がすーっと引いた。
Mさんも一緒だった。
「ここにハンモックこしらえようか」は今も覚えている。
ねむはMさんから始まった物語なのだ。
そのMさんが急逝して3年。
Mさん、あまりに早すぎるよ!
物語はまだ続いているよ。
ねむ、元気かい?
今頃どこに、どうしているんだろう?
成鳥になった君には子供がいるのかい?
毎年、ねむの花を見ると思い出す。
合歓の花 友突として 天国へ 長谷川通子