トキに会いたい
もう13年も前の事。10月10日。
私はとある港でタカの渡り観察の仕事をしていた。
すると突然、同僚のTさんが携帯を見ながら叫んだ。
「キンちゃん死んだ!」
びっくりして双眼鏡から目を離し、振り向いた。
「きんちゃんって、萩本欣一か?」
違った。
それは、当時たった1羽になっていた日本産トキのトキ子、別名キンが死んだという速報を見て叫んだのだった。
「えーっ」
絶句。推定年齢36歳だったという。
あれから13年。
私はずっと思っていたことがある。
「死ぬまでに一度でいいからトキに会いたい…」
本気で思っていた。できれば野生がいいけれど。
でも佐渡は遠いし…。
先日、新聞記事に石川県の「いしかわ動物園」でトキの一般公開が始まったと載っていた。
これはチャンスと仕事の帰りに寄り道(遠回り)して見に行った。
立派な動物園。開園と同時に入園。
敷地内の大きな池にはカモも。
「トキ里山館」入口。
里山風のケージ内には5羽のトキが。
成鳥ペアとことし生まれた別親の幼鳥3羽。
観察通路は半分がガラス張り。このガラスはマジックミラーになっていて、トキからは見えないらしいが、曇り空の時にはうっすら人影が写るとか。
だからなのか、端っこに集まっている。
覗き窓からも観察できます。
水辺で採餌。
ペアの成鳥。右が2001年生まれの♂。左が2003年生まれの♀。
一瞬、空を見上げる♂。空が恋しいのかい?
♪ああ ひとはむかしむかし 鳥だったのかもしれないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい♪ ってね。
出口に飾ってあった千羽鶴ならぬ千羽トキ。
地元の中学生が折ったという。
私も記念に1羽いただいた。
キンちゃんが死んで13年。
ただ近親交配のため死亡率も高いという。
どうすれば絶滅の危機から救えるのか。真剣に考えなければいけない。キンちゃんはそのことを教えてくれたのかもしれない。
思いは叶ったけれど、大きな課題を突きつけられた出会いだった。