かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

私の親父、95歳。

私の親父は95歳。未だ健在。
要介護4。有料老人ホームに入所して2年が経った。

この6月に特別養護老人ホーム(通称、特養)に転所がかなった。
今までの有料老人ホームの介護料は平均で月22万円。さらに5月から3万円値上げした。
値上げ説明会会場で私は「これ以上、上がったらやってゆけない!」と反対したが、施設は強行した。ここは私有の老人ホームなのだ。

新設予定の特養があると聞き、昨年末、入所を申し込んだ。3月には当落の連絡があると心待ちにしていたが、開設の4月になっても連絡はなかった。もうだめかと思っていた頃、「家族同伴で面接に」と連絡が入り、私は仕事をキャンセルして出向いた。
親父は若いスタッフに囲まれて上機嫌。「ハイヨーハイヨー」と口癖を連発している。
面接の結果は「いつ入所できますか?早ければ早いほうがいいです」
そして6月3日、無事入所とあいなった。これで介護料も安くなるはずだ。

親父は定年退職後、すぐに田舎の高知に移った。一緒に付いて行ったお袋は最後まで馴染めなかったという。田舎暮らしは男のロマン、女のガマン、なのか。

親父は痴呆症。面会に来る私が誰なのか分からない。
「俺、誰や?」
「さあ?よう見る顔やけどなあ」と言った具合。まあいいけどな。
ただ、以前飼っていたメジロや軍鶏や得意のハーモニカや田舎の話になると顔つきが生き生きとなる。それは間違いない。
この前、TVのニュースで、ある介護施設が紹介されていた。
海辺で育った寝たきりの痴呆のお婆さん、スタッフが外へ散歩に連れ出し、耳元で波の音を聞かせている。その音とはざるに入った小豆。スタッフが耳元でざるを揺するのだ。「波の音を聞くと表情が穏やかになるんですよ」とスタッフ。私は観ていて目頭が熱くなった。ここまでしてもらえるお婆さんは幸せ者だ。

95歳。いつ逝ってもおかしくない。
でもできるなら余生は豊かに幸せに過させてやりたい。
それが息子のできる親孝行。
スタッフの皆さん、よろしくお願いします。


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