かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

アリジゴク

「あの世」には「天国」と「地獄」があるという。
「天国」は雲のさらに上で、「地獄」は地の底。「閻魔大王」とやらが君臨し、「この世」で悪いことをしでかした者にはひどい仕打ちが待っているという。

この世にも天国と地獄が存在する。
歩行者天国、裸天国、餃子天国。受験地獄、通勤地獄、サラ金地獄。それに「蟻地獄」

伐採跡の乾いた斜面のあちこちに穴凹が開いている。
1、2、3、4、…数えてみるとゆうに60以上ある。



これはアリジゴク。ウスバカゲロウ(脈翅目ウスバカゲロウ科)という虫の幼虫が仕組んだトラップ。
アリや小昆虫がこのクレーターに落ちると砂が滑って脱出できなくなり、土中で待ち構えるウスバカゲロウの餌食となる。まさにアリたちにとっては「地獄」行き。

幼虫はどんな姿をしているのだろう?
戯れにクレーターの下を掘ってみた。出てきたのはこんな虫。






体長10ミリ、短い体毛、頭部には鋭い大あご。挟まれたら痛そうだ。腹部はぷっくり大きい。肛門はなく、排泄物は羽化する時まで溜め込むらしい。







しばらく地面に放置していたが、30分位したら自らじりじりと土中にもぐり始めた。
土色と同化している。
こいつはきっと土中のほうがいいのだ。
こいつは待ち伏せ型人生。いや虫生。
ひたすら獲物が落ちるのを待つ。
ウスバカゲロウは「薄翅蜻蛉」で間違っても「薄馬鹿下郎」ではないのだ。



でも見渡したかぎりではアリの姿は見当たらない。
腹が減らないのか?飢え死にはしないのか?
そして今日のような雨に日にはどうしているのか?
どうだっていいことを考えてしまう。

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