かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

誰が作った?この一輪挿し。

宿の庭先で変なものを見つけた。
これは瀬戸焼の一輪挿し?
ちがうちがう。
これはコガタスズメバチ(スズメバチ科)の初期の巣。



コガタスズメバチは北海道から南は琉球列島までの平地から山地にかけてふつうに見られる。
オオスズメバチほどの攻撃性はないが、秋はとくに近づかないほうがいい。

しばらく待っていると女王バチが帰ってきて、
口の部分を作陶、じゃなく造巣し始めた。



この女王バチ、今の時期はたった一匹で巣を作る。
昨秋、羽化した女王バチはオスバチと交尾後、一匹だけで越冬。
場所は倒木や朽ち木の中を削り取って楕円形の越冬室を作り、
体内にためた脂肪を栄養にして、まったく餌を取らず半年以上を過ごす。

5月、目覚めた女王バチは単独で巣作りを始め、一輪挿しを逆さにしたような形の巣に産卵する。
巣の外皮は樹皮や朽ち木の木質部をかじり取ったものにだ液を混ぜて作る。
細かく噛み砕いたあと、大あごと前肢を使って器用にうすくのばしながら貼ってゆく。
集めてくる材料の違いで表面には貝がら模様が浮かび上がる。



やがて6月中旬、働きバチ(♀)が羽化するとこの一輪挿しの口は自ら壊され、
さらに大きな丸い壷となってゆく。

それはそこいらの陶芸家も及びがつかないハチの芸術品なのだ。

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