かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

人間って、いいな。


1週間、海の見える展望台で仕事した。
日の出から日の入りまで、空を見続けた。
ここは見晴らしが良いので、いろんな人が入れ代わり立ち代わりやってくる。

「何したはるんですか?」
「タカの渡りを調べています」
「タカって渡るんですか?」「どこまでいくんですか?」「タカって…」
何回聞かれたことだろう。

毎日レストランでコーヒーを飲みに来るお爺さん。
地元の奥さんが犬の散歩。
夕日を見るカップル。
慰安旅行?の中年グループ。
バイクでやってきて、煙草を一服吸って一言も喋らず帰ってゆく若者。
どこかの施設の車椅子のお婆さん。
飛行機を見つけて「せんそう始まるんか?」はよかった。
「鷹渡る」の季語で一句をひねる、いいとこ?のおばあさん。
「その人の心を通して風景を読み取るの」らしい。難しい。
タカの渡りを見に来た男性が、実は私の先輩を知っていたという偶然。
思わず名刺の交換。話すうちにどんどんと打ち解けてゆく。
若い女性に介添えられて老人が3名、ベンチに座る。
「○○さん、ここで吸う一服は最高やろ!」
若い女性は「さっちゃん」というらしい。
「さっちゃん」はサシバの愛称でもある。
私の後ろからじっと様子を伺う夫婦連れ。
「もし興味がおありでしたら、覗かはりますか?今タカが止まっていますよ」
と松に止まるノスリをスコープに入れてあげる。
「…あっほんまや、おるわ!こんなん、よう見つけたなあ」
とすこぶる感激されていた。
しばらく見た後、「袖振り合うも何かのご縁やねえ」と帰って行かれた。

私は鳥を見ながらいろんな人に出会った。
みんな生きている。
当たり前のことだけど、そのことが何か暖かいものだと感じた。
みんな、それぞれしがらみを持ちながらも生きている。
初対面の人たちとあんなに大笑いしたこと、初めてだ。
人間っていいな、とつくづく思う。

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