50年前…

トビが舞っている。
偏西風がきつい。
海を見下ろす岬の高台に
ある外国人の碑が建っている。
50年前…。
火災した船を救おうとして殉難したデンマーク人。
39才、初航海だったという。

胸が痛む。
ありえない例えだけれど、
私がもし、機関長だったら…。

夜の激浪の海に飛び込めただろうか。

おのれの情けなさにさいなまれて
古びた碑を前にして立ち尽くすしかない。