かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

フキノトウ


「なんやこれ?」
さっきからネザサを相手にチャンバラごっこに夢中だったタケオが突然二刀流を下ろし、
地面を覗き込んでいる。
そのあいだに顔を突っ込んだアキラが
フキノトウや!」と答えた。
フキノトウ?」
「うんそうや、おまえ知らんのか。これはフキの子供やで」
「ふうん…」

2月になっても寒い日が続き、夕方には風も吹き出した。
カラスが鳴きながら帰ってゆく。ひざ小僧が冷たい。

「ただいま!」
「お帰り。お風呂が沸いてるよ」
「おかあさん、今日なあ、テントウムシ8匹もおったで!」
タケオはそう言いながら服を脱ぎ捨てて風呂に入ってしまった。
母さんは「しようがない子ね」とか言いながら服をかたずけ始める。
「あら?」
拾いあげたタケオのズボンのポケットから何かが床に転がった。
「あ、フキノトウ!」
それは小さな蕾のようなフキノトウだった。
そしてその香りは部屋中に広がっていった。

スターマーク