かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

ヒヨドリの巣

 旅館「好春」の裏庭にヒヨドリの巣がある。いや、あったと言ったほうが正しいかもしれない。教えてくれたのは女将さんだった。「鳥の巣があるのよ!」ととても嬉しそうだった。
 風呂場のすぐ裏のアカメモチ。脱衣場の窓から手を伸ばせば届きそうな丸見えの場所。巣の中で3羽のヒナの嘴が見える。昨日の夕方、親が来て給餌していた。私は窓から姿が見えないよう、かがんで服を脱いで風呂に入った。孵化して1週間くらいだろうか。ずいぶん遅い時期の育雛と思う。無事に巣立ってくれればいいのだが。
 今朝、ヒヨドリのうるさい鳴き声で目が醒めた。モズも鳴いている。2階の部屋の窓から見ると2羽のヒヨドリが屋根に止まってさかんに鳴いている。「…もしや…」いやな予感は当たっていた。急いで階段を下りて脱衣場からこそっと巣を覗く…。巣は横倒しになり、中は空っぽ。裏庭に出て巣の下を探すと…伸びかけた羽毛の軸と嘴…。誰の仕業だろう。四つ足ではないのは確かだ。あのモズが気にかかる。
 モズが悪いのではない。誰も悪くない。しようがないのだ。今日生きていくにはしようのないことなのだ。でも今日は悲しい日になってしまった。たかがヒヨドリだけど。
 ヒヨドリよ、今度作る時はもっと見えにくい所に作れよ!

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