かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

黄色いアンテナ

「そうだ、フクジュソウだ!」
久しぶりに訪れた現地の帰り、ここに自生地があったことを思い出した。
懐かしい一本道。
車1台通れる幅の前方を1台の軽。
おばさんが落石を拾いながら進んでいる。
「こんにちは。フクジュソウを撮らせてください!」
「ああ、どうぞ」
行き止まりの終点の一軒家。
その脇の林縁部に黄色の花が咲いていた。

 
「なーんも手入れしていないのに勝手に殖えてね」
「へー」
「私の子供の頃からあるんですよ」
「へー」
家の前には休耕田が広がる。
「私の代で田んぼは止めました」
草刈りを怠ったらイノシシの寝床になってしまった、とか。
軒下にはムクロジの実が干してあった。
 
這いつくばって撮った。
フクジュソウは黄色のパラボラアンテナのように咲いている。

 
「…いいなぁ…」
 
でもなぜここなんだろう?
昔々からここにあったのか?
 
「撮れましたか?」
「はい、ありがとうございました。」
 
おばさんにもっといろんな事を訊きたかった。
子供の頃から、っていうことはお婿さんをもらわれた?
どうしてこんな一軒家で?
でも訊けなかった。
身も知らない他人が訊くことではない。
 
ここに人が住んでいて、その傍らにフクジュソウが咲いている。
それだけでいいのだ。
 
さて、今度いつ見れるかな?
 
 
 

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