かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

19年前

昨日の朝は格安のビジネスホテルで目が覚めた。
5時30分起床。
日の出から日没までの仕事のために間に合った。
テレビを観ながら黙祷した。
 
19年前のあの朝。
娘は鏡台の下敷きになり、妻は倒れてきた箪笥の角で腰を打った。
息子は深夜のバイトでまだ帰ってこなかった。
水屋の食器が粉々になり、自作の下手な器だけが形を留めた。
直後に帰宅した息子の車中で夜を明かした。
怖かった。寒かった。この世が終わるかと思った。
それでも出勤した。
現像液で床は水浸し。棚の引き出しから原稿フィルムが散乱、2トンもある殖版機がずれていた。
それでも仕事した。はかない企業戦士。
 
はじめて見た神戸の町並み。
昨日まで1階だった瓦礫の山の上に人が立っている。昨日まで2階だった壁の向こうに青空が見える。その青空も壁も人もみんな滲んで見えてくる。
傍らの妻もマスクの下で鼻をぐしゅぐしゅいわしている。
 
あれから19年。
日没後帰路につく。明石海峡大橋を渡る。

 
私は今も生きている。
 
あの時「神さんなんかいない!」と叫んだ気持ちは今も変わらないけれど、
もし、あの人たちの犠牲の上に私たちの今があるとしたら…なんて考えたりもする。
神さん、なぜ私じゃなくあの人だったんですか?

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