エナガのくちばし
エナガのくちばしはどうしてあんなに短いのだろう?
日当たりの良い林の中ですわっていると、
エナガがやってきた。
「ちょっと尋ねるけど…」
「なんや」
「なんでそんなにくちばし短いのん?」
「…話せば長なるけどな」
「むかしむかし、そのもっと昔は長かったんや」
「ふーん、ソラシラナンダ」
「ある日、もてない若者がどうしたらもてるのか、『森のふくろう』に尋ねたんやな」
「森のふくろう、言うても落語家タレントやないで」
「そのふくろうが言うには、くちばしを短こうして、餌や巣材をようけ取れるようになったらもてる筈や、と言うたそうな」
「へー」
「それからその若もんは毎日せっせとくちばしを削りだした」
「何で削ったん?」
「考えついた挙句の果てはケヤキの樹皮で荒削りしたあと、トクサで仕上げた、とか言う話や。トクサ、知ってるな」
「ああ知ってる、それから」
「だから急にもてるようになったんや」
「へぇー、えらいもんやな」
「それを見ていた回りのエナガも見様見真似で削りだした」
「で、今日に至る、ということや。はやい話が」
「でもこの話は誰にも言うたらあかんで。誰も信じひんさかいに」
「よっしゃ、わかった」
と言うが早いか、エナガは去っていった。
「お父さん、風引くで!」
となりのかみさんに起こされた。