カイツブリ物語
もう半世紀以上も昔のはなし。
家の東の方角に大きな池がありました。周りに遮るものはなく、水面にはいつも空が映っていました。
そこに「うじょじょ」という水鳥が棲んでいました。
幼稚園へ通園する道すがら、行きも帰りも必ずその池のどこかにうじょじょは居て、すぐに見つかりました。
「うじょじょの頭に火が付いた!」
うじょじょに向かって大声をかけると、うじょじょはその声に反応してずぼっと潜ります。暫くして浮き上がり、もう一度「うじょじょの頭に火が付いた!」と叫ぶとまた潜ります。そのタイミングがピタリと合うのが面白く、何度も繰り返す。不思議だったことを覚えています。
「うじょじょ?」ほんとにそんな呼び名だったんだろうか?昔のことで、記憶違いではなかろうか。手当たり次第に検索してみた。
「うじょじょ」とは方言で、正式名は「カイツブリ」だということをかなり後になって知りました。
で、大阪の一部の地方では「じょう」と呼ばれていたことが分かりました。「じょうの頭に火が付いた」という民話が堺地方に残っていることも分かりました(介抱して命を救ってくれたおばあさんに恩返しをする話だとか)。記憶違いではなかったのです。「じょう」が「うじょじょ」にどうして変わったのかは分かりませんが。私が生まれて育った茨木でもそう呼ばれていたのです。
もう60年以上前の話。いま頃「うじょじょ」って言っても誰も覚えていないかもしれません。
鳥は人といちばん身近な野生動物だと言われています。有名な「舌切り雀」、「鶴の恩返し」など、昔の人々は今の私たちよりもっと身近に鳥と接していたのかもしれません。
「うじょじょ」ことカイツブリは留鳥。平地から山地の池、湖沼、河川、内湾などに生息。雌雄同色で、日本のカイツブリ類中で最小。尾羽は殆どありません。夏羽と冬羽で羽色が変わりますが、その時期は個体によってまちまち。巣は「鳰の浮き草」と呼ばれ、水草、杭、アシの茎、垂れ下がった木の枝などに水面に浮いているように作ります。
これは幼鳥の冬羽。
これは成鳥の冬羽。幼鳥とは嘴の色が違っています。
地元の池にカイツブリの親子がいました。
11月だというのに、親はまだ夏羽。雛は大きくなりました。翼はまだ短いです。
ある日の動画です。
小さな小魚を与えていました。
はやく自力で餌採れるようにね。