かけす・くらぶ

身近な生き物たちの出会いと「すい臓がん」闘病記

小さなお皿。

ある日、何気なく食器棚に目をやると、見覚えのあるお皿が目に入った。

「これは…」f:id:kakeyan60am:20200903183600j:plain

むかし、陶芸教室に通っていた頃の作品だ。

忘れかけていた。

何年前だろう?震災前だから30年も前になるのか?

その頃はサラリーマン。「やきもの」に興味を引かれ、陶芸教室に通い出した。

菊練り300回、ひも作り、たたら作り、電動ろくろ。汗を流しながら、拙作を繰り返していた。

まわりの会員の所作を見ていると、電動ろくろを駆使して薄い、精巧な作品を作る人、ひたすらひも作りしかしない人など、個性的な人ばかりで、私は「うーん」と唸ってばかりだった。「陶芸って奥が深いなぁ…」とつくづく思い知らされていた。

「とりあえず、自分の使う食器を作ってみよう」という結論に達し、黙々と励んでいた。

この小さなお皿はその頃の作品。4枚作った。f:id:kakeyan60am:20200903183654j:plain

作り方は簡単。陶土を適当な大きさに丸め、同じ大きさの調理用のボウルを2個用意し、ボウルの間に丸い陶土を何個か挟んで上から圧をかけて陶土を延ばす。ボウルの形なりに陶土は押され、皿の形になる。

素焼きの後、織部釉(灰釉に酸化銅を加えたもの)をかけて、酸化焼成で本焼き。

 

その存在を忘れかけていた。震災に耐え、残ってくれた。

30年も経てば、物の見方も変わる。そして、器も。

よーく見ると「貫入」が入っている。当時は気付かなかった。f:id:kakeyan60am:20200903183752j:plain

「貫入」とは釉薬と素地の収縮率の差により、焼成後の冷却時に生じる釉のひび模様のこと。使っている間にも模様は変化すると言われている。30年の間に現れたのだろうか?

たった4枚の小さなお皿だけど、なんか愛着が湧いてきた。

面白いかたちと色合い。いろいろ盛って楽しみたい。f:id:kakeyan60am:20200903183830j:plain

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